-
2025.12.26
2025年税制改正は開業医にどう影響?医療法人化を再検討すべき理由
2025年の税制改正では、所得税の控除見直しを中心に個人への課税構造に変化が加わります。そのため、個人でクリニックを運営する院長にとって、これまで以上に「医療法人化が本当に必要か」を見極める重要度が高まっています。とはいえ、改正内容は“すべての開業医が増税になる”といった単純なものではなく、収入の種類や控除の状況、自費診療の有無などにより影響が大きく異なります。したがって、医療法人化は節税のための万能解ではなく、個別の試算と経営計画に基づく判断が欠かせません。
1.税制改正が医療法人化の判断に影響する理由
2025年の税制改正では、所得税に関わる基礎控除や給与所得控除の見直しが行われ、一定以上の所得層では手取りが減る可能性があります。個人開業医の場合、収入がそのまま事業所得として課税対象となるため、影響を受けやすいケースがあります。
一方、医療法人化した場合は、院長の所得を「役員報酬」という給与形式で受け取ることになり、給与所得控除の適用や、法人税との組み合わせによって、節税効果が出る可能性があります。ただし、その有利性は収入構造・家族構成・既存の控除状況などによって異なり、法人化がすべての高所得者にとって得になるわけではありません。
2.個人開業と医療法人、それぞれのメリット・注意点
●個人開業の特徴
個人開業の収入は事業所得として扱われ、所得税・住民税が累進課税されます。
また、健康保険の保険診療は消費税が非課税のため、通常は消費税の負担がありません。ただし、自費診療や物販など課税売上が増えると、課税事業者となる可能性があり、消費税申告が必要になる点には注意が必要です。
●医療法人のメリット
・役員報酬として所得を受け取ることで、所得分散や税負担のコントロールがしやすい
・法人としての信用力が高まり、融資・分院展開・事業承継で有利
・将来的な組織体制や人材採用の面で柔軟性が高い
・個人開業医では事業運営が出来ず、付帯業務・介護施設の運営等が可能となる
●医療法人の注意点
・社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生し、法人・個人双方で保険料負担が生じる
※個人の時は正社員相当の方が5名以上で加入義務が生じていたが、医療法人になると人数にかかわらず加入義務が生じる
・会計・決算・事務管理の手間とコストが増える
・収益が安定していない開業初期に法人化すると、個人の方が有利な場合もある

3.2025年以降の制度変更と医療機関への影響
2025年以降は、税制以外にも見逃せない制度変更があります。
・所得税の基礎控除・給与所得控除の見直し(2025年分の所得税から適用)
→高所得層の手取りが減る可能性あり・厚生年金の標準報酬月額上限の引上げ(2027〜2029年に段階実施)
→高報酬の役員や従業員がいる法人では社会保険料の負担増につながる可能性・インボイス制度はすでに導入済(2023年10月)
→自費診療・物販が多いクリニックでは今後も対応必須これらはすべての医療機関に一律で大きな影響があるわけではなく、各クリニックの収入構成や経営規模によってメリット・デメリットが変わります。
4.医療法人化を判断する前に必ず行うべき3つの準備
①収入構造の整理と役員報酬のシミュレーション
保険診療・自費診療・物販などの収入の内訳を明確にし、法人化後の税額・社会保険料・手取りを比較することが必須です。
②社会保険料負担の長期的な確認
とくに今後、標準報酬月額の上限が引き上げられるため、高額報酬を設定する場合は将来の保険料負担を見据えた設計が求められます。
③経営計画・承継計画を含めた長期ビジョンの整備
分院展開、医業承継、スタッフ採用などを視野に入れる場合、法人化のメリットがより大きくなります。
■ まとめ:法人化は“節税だけで判断してはいけない”
医療法人制度は、医療の非営利性と永続性を確保し、安定的な経営基盤を築くための制度です。税制上のメリットや円滑な事業承継、分院展開等の事業拡大の可能性がある一方、設立・運営の手間や様々な制約も存在します。
メリット・デメリットを十分に比較検討したうえで、判断することが重要になります。
●参考情報・公式資料
・国税庁:令和7年度税制改正「所得税の基礎控除・給与所得控除の見直し」について
https://www.tkc.jp/consolidate/tkc_express/2025/04/202504_12417/?utm_source=chatgpt.com
・厚生労働省:厚生年金の標準報酬月額上限の段階的引き上げについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00024.html?utm_source=chatgpt.com
・医療承継サポート:医療法人と個人事業主の違いは?税金や迷った場合のポイントを解説
・東京保険医協会:インボイス制度と医療機関の関係についての解説
https://www.hokeni.org/docs/2022110800026/?utm_source=chatgpt.com
・厚生労働省:医療法人の附帯業務(法第42条)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000901066.pdf
投稿者プロフィール
-
開業医支援センターの代表税理士、医業経営コンサルタントの向田と申します。約15年間で50件以上のクリニックの開業と経営支援をサポートしてきた実績を活かし、ドクター皆様のお役に立ちたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
最新の投稿- 2025年12月26日2025年税制改正は開業医にどう影響?医療法人化を再検討すべき理由
- 2025年11月28日採用で失敗しないために院長が知るべき「求人票の落とし穴」
- 2025年10月27日群馬県内の医療法人が採用するリース契約の実例と節税効果
- 2025年9月30日ブログ【集客の鍵】群馬県での医院チラシ・看板戦略の成功と失敗パターン
